織田信長、京都。
この単語が並んだ時、多くの人はそれに続く言葉に「本能寺」を当てはめると思います。
恐らく多くの人にとっては、織田信長が京都で宿にしていたのは本能寺という認識が一般的なのではないでしょうか?
残念ながら、それは間違いです。
とはいえ戦国時代にも織田信長にもほぼ関心が無かった私も、京都で織田信長が定宿していたのは本能寺だと最近まで思い込んでいました。
関心が薄いことというのは往々にして、思い込みに左右されがちですね…。
はじめに
元服後は居城を転々としますが、どの城も今の京都府外にありました。
つまり京都に用事がある際には、いつも府外の居城から上洛していたわけですね。
すると上洛の際にはどこに滞在していたのか?という素朴な疑問が湧いてきます。
(正直私は、織田信長は長く京都に住んでいたと信じ切っていたのですが、これは戦国時代や戦国武将に関心のない人にありがちな思い込みなのかもしれません。)
信長研究家の方々の今までの研究成果を見れば、その答えは一目瞭然かつ明確です。
ただこの度、初めて『信長公記』を読んでみて、「上洛中の信長公は、こんなにも様々な場所に宿泊していたのか」と知ることが出来たので、中川太古さんが現代語訳された『地図と読む現代語訳信長公記』から、その宿泊地を取り上げてみたいと思います。
妙覚寺
上洛時の定宿として、妙覚寺はファンの間でも有名なようです。
織田信長・京都・宿、などとググれば、必ず織田信長と妙覚寺についての記事やブログなどが出てくるほどです。
妙覚寺さんも信長公の定宿だったことを、ホームページに公言されています。
確かに中川さんの信長公記の訳文を読むと、上洛時の信長は10回以上も妙覚寺に滞在しています。
将軍である足利義昭が謀反を起こし挙兵した時にも、信長はこの妙覚寺を宿にしています。
勢田の橋の完成の検文の際や、二条に新邸を立てる計画の際にも妙覚寺に泊まっています。
二条の新邸を皇室に献上したその日にも、夜になると新邸から妙覚寺へ移っています。
相国寺
『信長公記』によると相国寺への滞在数は多くはないのですが、何度かは滞在しているようです。
奈良の東大寺の香木が欲しい旨を宮中に申し出る際、また宮中で東宮が蹴鞠の会を開催した際などに相国寺に宿泊しています。
宮中に用事のある際には相国寺は近いですし、便利だったのでしょうか。
妙覚寺もすぐそばではありますが。
二条新邸(二条御所)
元々二条御所は、信長が自分のために造らせたものです。
天正4年、関白である二条晴良の屋敷が空き地となったため、その場所に自分の邸宅を建てることにしました。
信長43歳のとき、安土城の築城の頃とさほど変わりません。
鷹狩りの装束で天皇に拝謁した際にも、この二条の新邸から参内しています。
しかし何を思ったか、安土城の天守閣が完成した後、この二条の新邸を皇室に献上しています。
元々そのつもりで造らせたのか、それとも完成した安土城の天守閣がよほど気に入ってしまったのか…どうだったのでしょうか。
二条の新邸は体裁として造らせただけであり、安土城を理由に皇室に譲ったのでしょうか。
知識が素人の私には予想し兼ねますが、文献を探せば答えが見つかりそうですね。
真相が気になります。
本能寺
本能寺には志賀の陣の項目(信長の上洛に関してはかなり初期の頃)で、滞在の記載がありました。
信長は自分のために二条に造らせた邸を皇室に献上したあと、本能寺を定宿にしたい旨を京都所司代の村井貞勝に普請し、指示を出しています。
それゆえこの後から本能寺に泊まることが増えたのだと思われますが、その普請をしたのが天正8年、信長公が47歳のとき。
天正10年の6月、49歳のときに本能寺で亡くなっていますので、『信長公記』だけを見ても、本能寺への滞在数はあまり多くはなかったことがわかりました。
その他の場所
また畿内の平定のために入京した際には、知恩院や東福寺に陣を張ったり、清水寺に入ったりもしています。
また医者である半井驢庵の屋敷に泊まったりもしています。
足利将軍義昭との関係が良好だったころ、武者小路(今の京都市上京区)に信長の邸を造らせようと正親町天皇に普請し着工されますが、のちに信長との関係が悪化したため、完成せずに終わったこともありました。
さいごに
私は研究者でもなければ、日本史を専攻している学生でもありません。
全くの専門外の人間が一冊の本だけを手に取り、さらっと読了した後に気付いたことだけを書いた単なるブログ記事であり、ただの感想文に近いものですので、内容に信憑性はありません。
その点はご了承ください。
とはいえ『信長公記』は織田信長に関する歴史的資料として価値が高いとのことですので、この一冊だけでも、信長公を知るにはかなり役立つのではないかと思っています。
今後、今回紹介した京都市の各所を訪れる際には、ここが信長公が滞在した(陣を張った)場所なのだということをより深く感じつつ、より京都を味わいながら旅ができるということを嬉しく思います。
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