今回も京都のモダン建築についての投稿です。
2021秋、京都市京セラ美術館「モダン建築の京都」展との連動企画として、いくつかのモダン建築が特別公開されました。
本願寺伝道院です。
こちらは長楽館、大雲院祇園閣と同じく、秋期非公開文化財特別公開ヶ所の一つでもありました。
見学感想
伝道院は昨日投稿した大雲院祇園閣と同じくして、建築家・伊東忠太の設計による通常内部非公開の建物です。
1912年に、親鸞聖人の650回大遠忌を記念して建てられました。
建物の北に面するのは、東山七条の豊国神社から繋がるあの正面通です。
イスラム様式のドームは仏具店が並ぶ門前町の中では異色の存在で、一度見たら忘れないほどのインパクト。
どうしてこんなところにこんな建物が…と思ってしまう方も少なくないはず。
設立当時は西本願寺の後援を受け、真宗信徒の生命保険会社として建造されました。
現在は僧侶の教育施設の場になっていますが、過去には銀行や診療所としても使われていたそうです。
建物は三階建てで、その上にドームが乗っている姿が写真などでよく見る正面からの姿です。
中の様子も外観と同じく洋風の装いで、日本の一般的な寺院建築には見られない茶色の階段(洋館によくあるタイプの階段)が印象的でした。
三階にある発覚ドームの窓(扉)は花灯窓のようにも見えます。
この建物に取り入れられているのは、イスラムのドーム、イギリスをイメージした煉瓦建築、更には日本の寺院建築に見られる肘木(斗栱)など。
当時はモダン建築に肘木(斗栱)を使うのが流行っていたのでしょうか?
移り変わる時代に受け入れられる仏教の姿を模索した本願寺の思想を、世界を見てきた伊東忠太が見事に表現したといえる作品なのかもしれません。
さいごに
幸運にも京の街に残されたモダン建築が人気を博す一方で、失われつつある京町家の存在も、モダン建築と同じように大切に守られていくべきだと思います。
とはいえ次第に劣化し、世間からの需要が減っている建物を、ただ一概に守るというのも難しい問題ではありますよね。
守っていくためにはより多くの人々の関心を集める必要があると思います。
モダン建築だけでなく京町家に関するイベントも、今後少しずつ増えていったら個人的には嬉しいなと思っています。