立華の京都探訪帖

1200年の都を歴史・文化的視点から楽しむ旅記録 ᝰ✍︎꙳⋆

東山の麓にそびえ立つ塔?祇園閣がある大雲院

 

今回も京都のモダン建築についての投稿です。

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2021秋、京都市京セラ美術館「モダン建築の京都」展との連動企画として、いくつかのモダン建築が特別公開されました。

今日はその内の一つ、大雲院祇園閣をご紹介します。

 

大雲院 祇園閣とは?

大雲院は、東山エリアにあるお寺です。

八坂神社から徒歩5分も掛からない人気観光地エリアにあります。

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大雲院は創建当初から現在地にあったわけではなく、2度目の移転時(1973年)に今の場所に移ってきました。

南門はその時の移転とともに、寺町四条から移築してきた歴史ある門です。

元々この場所には1928年に建てられた大倉財閥大倉喜八郎の別邸がありました。

 

大雲院が創建されたのは戦国時代、1587年です。

織田信長・信忠の父子の非業の死を悼んだ時の天皇正親町天皇からの命で創建されました。

大雲院の名は、織田信忠法号にちなんでいるそうで、境内には信長・信忠の墓碑もあります。

 

個人的に興味深いのは大雲院を創建したのが太田牛一の『信長公記』にも登場する、浄土宗の僧侶だという点です。

信長のお膝元:安土の町で行われた安土宗論(浄土宗vs法華宗)にも登場し、勝者側となった浄土宗の貞安が、正親町天皇から命を受けて大雲院を創建したと言われています。

現地を訪れた当時はそのことを全く知らなかったので(『信長公記』も読んだことがなかった)、最近になって『信長公記』と大雲院が繋がっていることを知り、とても驚きました。

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祇園

大雲院で一番有名なのは祇園閣です。

高さは約40メートルの巨大な建物で、ねねの道を北に向かって歩けば、その存在に気付く方も多いかと思いますが。

祇園閣は大倉喜八郎の生誕90歳を記念して建設されたもので、祇園祭の鉾をイメージしていることからその名が付いています。

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また祇園閣の屋根が銅板葺きであることから、金閣銀閣と並び、銅閣と呼ばれることもあります。

設計は伊東忠太です。

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内部には外観からは想像できないような世界が広がっていました。

十二支の装飾や独特な照明なども印象的ですが、何より忘れられないのが色鮮やかな壁画です。

下層は階段の幅があまり広くないのですが、そのせいもあって壁画に取り囲まれるような感覚に圧倒されました。

最上階からは360度の眺望が楽しめます。

このご時世ですから付近のお宅のご迷惑にならないように、眺望の写真はご遠慮くださいとのことでした。

だからこそ現地でじっくりと堪能する景色は格別です。

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祇園閣の最上階に訪れた際には、喜八郎翁もこの景色を存分に楽しんだのかなと、当時に想いを馳せてみるのもまた味わい深いと思います。

 

さいごに

大雲院には南禅寺の『絶景かな』で有名な石川五右衛門のお墓もあります。

 

ちょっと目立たないところにあるので私も拝観当時は見逃してしまったのですが、次の機会にはお参りさせていただきたいと思っています。

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寺院:大雲院自体は祇園閣の建物が完成してからこの大倉邸跡に移ってきたとはいえ、お寺の境内に仏塔ではない、そもそも塔でもない巨大な建物が建っているのは異質だとも言えます。

更にはそれがモダン建築だという点が、何だかミスマッチしているようにも思えてまた面白い。

仏塔ではないのに内部に広がっているのはどう考えても宗教空間で、祇園閣の入口すぐの場所には阿弥陀如来様もいらっしゃいます。

 

祇園閣は、モダン建築の奥深さを感じさせられる建物でした。