2022年6月。
下賀茂神社の葵の庭に「氷室(ひむろ)」が再興されました。
ニュースでそのことを知ってはいたものの、一般公開がされていることまでは知らなかったのですが、秋になってからようやく観に行くことができました。
戦時中の1944年に防空壕に改造されて以来、78年振りの復興です。
太平洋戦争時には西陣や馬町でも空襲があり、京都にも被害が出ました。
それを思うと当時すでにその役目を果たしていなかった氷室が、防空壕になってしまったのは致し方ないと言えるでしょうか。
復元された氷室を見てみよう
写真奥に見えている三角形の建物が氷室。
氷室は、いわば天然の冷蔵庫です。
現代のように電気冷蔵庫が無い時代、雪や氷を貯蔵しておくための場所として使われていました。
奈良時代に作られた歴史書『日本書紀』には、既に氷室の使用についての記述があります。
有名な随筆・清少納言の『枕草子』や、その平安時代の律令をまとめた『延喜式』にも氷室に関する記載が見受けられ、その歴史は古くまでさかのぼります。
1200年の都よりも昔から氷室が存在していたことを考えると、本当に驚いてしまいます。
江戸時代になると、雪や氷だけでなく食品そのものの保存にも使われるようになり、下鴨神社では神饌(神様に供えるための食物)の保存に活用されていました。
5月の葵祭用の神饌保存にも利用されたそうです。
すぐ近くまで寄ることができるので、周りをぐるりと一周してみました。
以下、正面の姿です。
合掌造りの屋根。立派な外観です。
高さ約4.5メートル、深さ約2メートル。
中に入ることはできませんが、すき間からちらっと内部を拝見。
下鴨神社の氷室内部には地下水まで掘られた穴があり、そこに冬の間にできた雪を入れることで地下水を凍らせていたとのことです。
2022年6月1日。
氷室の再興が完了した下鴨神社では、この日にお披露目の「氷室開き神事」が行なわれ、翌2日から一般公開(外部のみ)が始まっています。
さいごに
この6月1日。
旧暦では「氷の節句」や「氷の朔日」と呼ばれ、宮中ではこの日に氷を口にすると、その年の夏を健康過ごせるいう暑気払いの風習がありました。
そのため、この日を選んで氷室開きが行なわれたようです。
拝観料は500円。
隣接する大炊殿の見学もできます。
(こちらは内部拝観可能)
夏が近付き暑くなってくると、また話題になり拝観客も増える可能性があります。
まだまだ寒い季節の今のうちに、もしくは夏を外して足を運んでみると、ゆっくり見学を楽しめるかもしれません。